TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説
東北向け新品種「ゆきふわり」
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結論:東北中南部で初の多収米粉パン用品種が誕生
農研機構は、東北地方中南部での栽培に適した多収の米粉パン用新品種「ゆきふわり」を育成しました。科目: 作物生産(水稲) / 栽培区分: 慣行栽培
米粉需要は2009年の5千トンから2025年には6万トンまで拡大した一方、主食用米不足の影響で米粉用米の作付けが減り、2026年は需要に対し3万トンの不足が見込まれています。従来の米粉パン用専用品種「笑みたわわ」「ミズホチカラ」は関東以西向けで、東北中南部に適した専用品種がありませんでした。「ゆきふわり」の登場により、米の主産地である東北でも米粉パン用米の安定生産が可能になるとみられます。
原理:なぜ「東北向け」「多収」「米粉パン適性」を両立できるのか
米粉パン用品種に求められる要件は大きく3つあります。
- 熟期と耐冷性:対象地域で登熟しきる早さと、冷害を回避する耐冷性が必須。収量の安定はここから始まる。
- 多肥栽培でも倒伏しない耐倒伏性:多収を狙うほど窒素施用量が増え倒伏リスクが高まるため、茎の強さが収量確保の前提になる。
- 製パン適性(アミロース含有率・デンプン損傷度):デンプンを構成するアミロース含有率がうるち米よりやや高いとパンの膨らみが良くなる。製粉時のデンプン損傷が少ないほど生地の吸水量が抑えられ、比容積(パンの膨らみ指標)が高くなる。
「ゆきふわり」は耐冷性の強い系統に多収の加工用品種「ふくひびき」を交配して育成されました。耐冷性は「ふくひびき」より明らかに強い"やや強"に改良され、出穂期は「ひとめぼれ」より2日ほど早く、成熟期は2日ほど遅いという、東北中南部の気候に合わせた熟期を実現しています。
現場での判断基準(チェックリスト)
品種選定・作付け判断の際に確認すべきポイントは以下の通りです。
- 栽培地の熟期が「ひとめぼれ」とほぼ同等かどうか(作期の組み方に直結)
- 多肥栽培での倒伏リスクをどこまで許容できるか
- トリケトン系4-HPPD阻害型除草剤(ベンゾビシクロン、テフリルトリオン、メソトリオン等)を使う予定があるか
- 穂発芽性が"やや易"のため、適期刈取りの体制が組めるか
- 葉いもち病常発地・イネ縞葉枯病常発地かどうか(防除体制の確認)
特に除草剤については、「とよめき」「やまだわら」等の多収品種や「笑みたわわ」「ミズホチカラ」がトリケトン系成分に感受性を示し枯死することが確認されているのに対し、「ゆきふわり」は非感受性で耐性があります。使用する除草剤は必ずラベルの登録内容を確認し、地域の普及指導センター等に相談したうえで選択することが重要です。
品種比較表
項目 | ゆきふわり | 笑みたわわ/ミズホチカラ | ひとめぼれ(参考) |
|---|---|---|---|
栽培適地 | 東北中南部 | 関東以西 | 東北中南部 |
収量 | ひとめぼれ比20%以上多収 | – | 基準 |
アミロース含有率 | 18〜20%程度 | ゆきふわりよりやや高い | ゆきふわりよりやや低い |
トリケトン系除草剤 | 非感受性 | 感受性あり | – |
穂発芽性 | やや易(適期刈取り必須) | – | – |
慣行栽培と有機栽培での違い
今回のプレスリリースは慣行栽培を前提とした品種特性評価が中心です。トリケトン系除草剤への非感受性という特性は、化学合成除草剤を用いる慣行体系での選択肢拡大に直結します。一方、有機栽培では化学合成除草剤を使用しないため、この耐性そのものは直接のメリットにはなりません。ただし、耐倒伏性や耐冷性、多収性といった基本的な栽培特性は、除草や病害虫対策に手間のかかる有機栽培においても、安定生産を支える土台として評価できる可能性があります。葉いもち病圃場抵抗性が"やや弱"、イネ縞葉枯病に罹病性という点は、化学農薬の使用機会が限られる有機栽培でより慎重な防除計画が求められる点に留意が必要です。
よくある失敗と対策
- 刈取り適期を逃す:穂発芽性が"やや易"のため、収穫適期を過ぎると品質低下につながる。出穂期・成熟期を記録し、早め早めの収穫判断を徹底する。
- 多肥設計を誤る:多収品種だからと窒素を過剰投入すると、品質や製パン適性のばらつきにつながりうる。多肥条件でも倒伏しにくい特性はあるが、栽培暦に基づいた施肥設計が基本となる。
- 病害常発地での対策不足:葉いもち病・イネ縞葉枯病の常発地では、品種特性を理解した上で防除計画を立てないと被害が拡大する恐れがある。
まとめ
「ゆきふわり」は、東北中南部で初めて実用化された多収の米粉パン用品種であり、ひとめぼれ比2割以上の多収性とトリケトン系除草剤への非感受性を兼ね備えています。2026年度からは宮城県で種子生産・米粉パン用米の生産が始まる予定で、学校給食など米粉パン提供の機会拡大が期待されます。自分の経営地域の熟期・病害常発リスクと照らし合わせたとき、この品種はどんな位置づけになるでしょうか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。
現場で使える!専門用語ミニ辞書
- 米粉用向け専用品種(べいふんようむけせんようひんしゅ)
- 国の委託試験等でパン・麺用の加工適性が高いと確認された品種。現場では補助制度の対象品種選定の基準になる。
- トリケトン系4-HPPD阻害型除草剤
- ベンゾビシクロンなどトリケトン成分を含む除草剤の総称。多収品種の中には感受性を示し枯死するものがあるため、使用前に対象品種との相性確認が必須。
- アミロース
- デンプンを構成する成分の一つで、含有率が低いほど粘りが強い米になる。米粉パン用途では、一般品種よりやや高いアミロース含有率がパンの膨らみの良さにつながる指標となる。
- 湿式気流粉砕(しっしききりゅうふんさい)
- 精白米を水浸漬後に気流粉砕機で砕く製粉方法。デンプン損傷が小さい米粉を作れるため、製パン適性の高い米粉製造に用いられる。
- デンプン損傷度
- 製粉時の衝撃や熱でデンプンに割れや糊化が生じる度合い。損傷度が高いと生地の吸水量が増え、パンの比容積が下がる要因になる。
- 比容積(ひようせき)
- 単位質量当たりの体積で、パンの膨らみを数値化した指標。値が大きいほど膨らみの良いパンと評価される。
参考
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アグリコメ 1
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編集部NextTrend Review 編集部
【編集部より】東北で稲作を営む皆さんにお聞きします。米粉パン用品種への作付け転換を検討しますか?地域の気候条件や防除体制を踏まえた実感を教えてください。