TECHNICAL MANUAL — 社内教育用 技術解説
水稲有機栽培のチェーン除草機、電動リール式の実例と効果
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科目: 選択科目 野菜ではなく水稲(普通作物) / 栽培区分: 有機栽培
水田の除草は有機水稲栽培における最大のコスト要因の一つであり、人力作業の負担軽減と抑草効果の両立が課題となる。新潟県阿賀野市笹神地区では、電動リールとチェーンを組み合わせた除草技術が考案され、北陸農政局が視察・導入検討を行っている。本記事では、この技術の仕組みと効果、現場での判断基準を整理する。
結論:電動リール化で体への負担が大幅軽減、抑草効果も期待できる
笹神地区のチェーン除草機は、幅2.7メートルの発泡スチロール製の浮きにFRP加工を施し、チェーン約60本を4センチ間隔で垂らした構造である。あぜから釣り用の電動リールで引っ張ることで、水田全面にチェーンを通過させる。以前は手引きだったが、約10年前に電動リールを採用したことで作業負担が大幅に軽減された。2人作業で水田20アールの除草が約40分、1人なら倍の時間で対応可能とされる。
原理:なぜチェーン除草が雑草抑制につながるのか
チェーンが土壌表面を撹拌することで土が巻き上げられ、水が濁る。これにより日光が水中・土中に届きにくくなり、雑草の光合成や発芽に必要な光条件が阻害されることで抑草効果が見込めるという。これは濁水効果による光遮断という、有機水稲栽培で広く用いられる抑草原理の一つに合致する。
また、稚苗は活着までの期間に雑草が先に生えやすいのに対し、ポット苗は活着が早いため、雑草との競合で稲が優位に立ちやすい。笹神地区では「コシヒカリ」をポット苗で栽培し、3〜4日間隔でチェーン除草を行うことで、苗の活着の早さと除草の頻度を組み合わせた体系を構築している。
現場での手順・判断基準(チェックリスト)
- 使用資材:幅2.7mの発泡スチロール浮き(FRP加工)、チェーン約60本(4cm間隔)、釣り用電動リール
- 作業人数:2人作業が標準(1人でも可能だが所要時間は倍)
- 作業時間の目安:20アールあたり約40分(2人作業時)
- 苗の種類:活着の早いポット苗との組み合わせが効果的
- 除草頻度:3〜4日間隔での実施(視察時点で5回目の実施例あり)
- リール性能:電動リールの性能によってさらなる時間短縮の余地がある
慣行栽培と有機栽培での違い
項目 | 慣行栽培 | 有機栽培(本事例) |
|---|---|---|
除草の主手段 | 除草剤による化学的防除 | チェーン除草など物理的・機械的防除 |
作業の目的 | 雑草の枯殺 | 濁水による光遮断で発芽・生育を抑制 |
労力負担 | 散布作業中心で比較的軽い | 手引き時代は重労働、電動化で軽減 |
苗の選択 | 除草剤体系に合わせた苗で可 | 活着の早いポット苗が有利 |
有機栽培では化学合成除草剤を使用できないため、物理的な手段と栽培管理(苗質・移植時期)の組み合わせで雑草を抑え込む体系設計が必要になる。笹神地区の事例は、機械化による省力化と、ポット苗という栽培技術を組み合わせた点に特徴がある。
よくある失敗と対策
- 想定より力が必要で疲労する:視察に参加した農政局職員も「予想より力が必要だった」と述べている。田んぼに入っての手作業に比べれば負担は軽いが、無理のない作業時間・人数配分を事前に検討する必要がある。
- 苗の活着が遅れると雑草が先行する:稚苗では活着までの間に雑草が生えやすいため、ポット苗など活着の早い苗質を選択することが前提となる。
- 除草のタイミングを逃す:3〜4日間隔という頻度が効果の前提になっているとみられ、間隔が空きすぎると雑草が大きく育ち抑草効果が薄れる可能性がある。
※本技術は機械・資材の使用を伴うため、導入にあたっては地域の普及指導センター等に相談し、自身の圃場条件に合うか確認することが望ましい。
まとめ
電動リール式チェーン除草機は、有機水稲栽培における除草作業の省力化と抑草効果を両立させる手段として、新潟県阿賀野市笹神地区で実践されている。ポット苗との組み合わせや3〜4日間隔での実施など、機械だけでなく栽培管理全体を見た体系設計が効果を左右する点が実例から読み取れる。北陸農政局は今後、動画や資料の作成を通じて管内への普及を検討している段階であり、同様の課題を抱える有機栽培現場にとって参考になる取り組みといえる。
現場で使える!専門用語ミニ辞書
- FRP(エフアールピー・繊維強化プラスチック)
- プラスチックにガラス繊維などを混ぜて強度を高めた素材。軽量かつ耐久性があり、水田で使う浮き構造物の加工に用いられる。
- 抑草(よくそう)
- 雑草を完全に枯らすのではなく、発芽や生育を抑え込むこと。有機栽培では除草剤を使わないため、物理的・環境的に抑草を図る発想が重要になる。
- 濁水効果(だくすいこうか)
- 水田の水を濁らせることで光を遮断し、雑草の種子発芽や光合成を抑制する現象。チェーン除草や中耕などで土を撹拌すると生じる。
- ポット苗
- 育苗箱の一つ一つが独立した小さな鉢(ポット)状になっている苗。根鉢が崩れにくく移植後の活着が早いとされ、雑草との競合で有利になりやすい。
- 活着(かっちゃく)
- 移植した苗が新しい根を張り、圃場の土壌に定着して生育を再開すること。活着までの期間は苗が雑草に対して弱い状態になりやすい。
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